大阪府寝屋川市の田中司法書士事務所では、相続、遺言、不動産登記、会社設立登記、成年後見などの業務を行っており、経験豊富な司法書士が法律相談を承っております。

借地契約(土地)

借地契約(土地)

賃貸借契約と使用貸借契約

質問
土地を借りるために探していたら、近所の人が使ってない土地があるから固定資産税相当分だけ支払ってくれたら使ってもいいといわれました。
この土地を使ってもいいでしょうか?

答え
本件の契約は賃貸借契約とはならず、使用貸借契約となります。
貸借契約と使用貸借契約では色々と違うところがあります。
貸借契約では、借主は賃料支払いの義務がありますが、使用貸借契約では、基本的には無償です。
固定資産税相当分の支払いだけでは少額であり、賃料の支払いがあるとは認められません。
また、使用貸借契約では、契約で期間を定めなかった場合は、借主が利用が終わった時に地主に返還しなければならず、契約で期間も目的も定めていなかった場合には、貸主がかえしてほしいと言った時に返さなければなりません。
このように使用貸借契約では、賃料支払いがない分だけ貸主に強い権限が与えられていますので、よく考えてから契約して下さい。

民法(使用貸借)
第593条 使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

(借用物の返還の時期)
第597条 借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。
2 当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。
ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。
3 当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。

質問
地主と借地契約をしましたが、契約期間は「25年間」となっていました。
この点を地主に指摘したら、「この条件でイヤなら契約しない」といわれました。
私もこの土地を使用したかったので、仕方なく契約したのですが、問題なかったでしょうか?

答え
この土地の利用目的が「建物所有」かどうかで大きく分かれます。
この土地の利用目的が「建物所有」であれば、借地借家法の適用ががあり、土地賃借権の存続期間は30年となります。
従って借地期間の10年間は無効であり、30年間は借地を使用することができます。
利用目的が「建物所有」でない場合、つまり、「駐車場」とか「資材置場」で使用する場合、民法の規定の適用により、存続期間は20年を超えることはできない。
となっています。
従って、借地の契約期間は20年間となります。

民法(賃貸借の存続期間)
第604条 賃貸借の存続期間は、20年を超えることができない。
契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、20年とする。

(趣旨)
第一条 この法律は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。

(借地権の存続期間)
第三条 借地権の存続期間は、三十年とする。
ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。

地代の支払いを滞納した場合、即時に契約の解除ができるか

質問
契約書で、「地代の支払いを1回でも滞納した時は、催告なしに直ちに契約を解除できる」と定めてあります。
地代の滞納があれば即時に契約の解除ができますか?

答え
1回の滞納で即時に契約解除をするのは無理だと思われます。
「地代の支払いを1回でも滞納した時は、催告なしに直ちに契約を解除できる」この様な契約内容を無催告解除特約といいます。
賃貸借契約を解除するには解除するにあったては、賃貸人、賃借人の信頼関係が無くならなければなりません。
これを信頼関係理論といいまして、賃貸借関係は長期間に及ぶため、賃貸人賃借人が相互に信頼し合って目的物を使用収益する、賃料を支払うことになります。
そして、1回の賃料滞納のみでは信頼関係が破壊されたとはいえず契約解除はできないものと思われます。
従って、無催告解除特約の存在があるからといいって、1回の賃料滞納のみをもって契約解除をすることはできません。
最も、賃料滞納が頻繁におこり、そのうち賃料の未払いが何回もあるようでしたらこの無催告解除特約も効力を生じて契約の解除をすることもできるでしょう。

建物の増改築を一切禁止することはできますか?

質問
友人に土地を貸すとき、建物の増改築を一切禁止することはできますか?

答え
建物の増改築を禁止する特約をつけることはできます。
しかし、増改築を一切禁止する特約をつけたとしても、借地権者は裁判所に対し建物の増改築に関して地主の状抱くに代わる許可を求めることができます。
この、地主の承諾に代わる裁判所の許可というのは、土地の通常の利用上相当とすべき増改築について借地権者と地主の協議が調わない場合、裁判所が地主に代わってその増改築に関し許可をするものです。
従って、契約書で建物の増改築を一切禁止していても、裁判所の許可がでた場合には増改築がされてしまうので、絶対的に禁止することはできません。
ただし、裁判所はこの許可をする場合、借地権の残存期間や土地の状況、借地に関する従前の経過等一切の事情を考慮しなければならず、また借地条件を変更したり財産上の給付を命じることもできます。
いずれにしましても、契約書上では建物の増改築について一切の禁止をしてもお互いの道義的意味合いを持つ規定になるものと思われます。

借地借家法(借地条件の変更及び増改築の許可)
第17条 建物の種類、構造、規模又は用途を制限する旨の借地条件がある場合において、法令による土地利用の規制の変更、付近の土地の利用状況の変化その他の事情の変更により現に借地権を設定するにおいてはその借地条件と異なる建物の所有を目的とすることが相当であるにもかかわらず、借地条件の変更につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、当事者の申立てにより、その借地条件を変更することができる。

2 増改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。

3 裁判所は、前二項の裁判をする場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。

4 裁判所は、前三項の裁判をするには、借地権の残存期間、土地の状況、借地に関する従前の経過その他一切の事情を考慮しなければならない。

5 転借地権が設定されている場合において、必要があるときは、裁判所は、転借地権者の申立てにより、転借地権とともに借地権につき第一項から第三項までの裁判をすることができる。

6 裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第一項から第三項まで又は前項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。

借地権の譲渡を一切禁止することはできますか?

質問
今度、友人に土地を貸そうと思っていますが、友人以外の人に土地を使ってほしくないので、借地権の譲渡を一切認めないということもできますか?

答え
借地権の譲渡を禁止する特約を付けることはできます。
しかし、借地権の譲渡を一切禁止する特約つけたとしても、借地権者は裁判所に対し借地権の譲渡に関して地主の承諾に代わる許可を求めることはできます。
この、地主の承諾に代わる裁判所の許可というのは、地主が借地権の譲渡をしても不利になるおそれがないのに、借地権譲渡に承諾しない場合、裁判所が地主に代わって借地権の譲渡の許可をするものです。
従って、契約書で借地権の譲渡を一切禁止していても、裁判所の許可がでた場合には借地権の譲渡がされてしまうので、絶対的に禁止することはできません。
しかし、地主の承諾に代わる裁判所の許可を求める手続き中に、地主は裁判所が相当と認める金額でこの借地権を買い取ることができます。
いずれにしましても、契約書上では借地権の譲渡について一切の禁止をしてもお互いの道義的意味合いを持つ規定になるものと思われます。

借地借家法(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
第19条 借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。
この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。

2 裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。

3 第一項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。
この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。

4 前項の申立ては、第一項の申立てが取り下げられたとき、又は不適法として却下されたときは、その効力を失う。

5 第三項の裁判があった後は、第一項又は第三項の申立ては、当事者の合意がある場合でなければ取り下げることができない。

6 裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第一項又は第三項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。

7 前各項の規定は、転借地権が設定されている場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。
ただし、借地権設定者が第三項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。

建物は誰の登記名義でも借地権を主張できますか?

質問
借地上の建物で生活をして来ましたが、建物が古くなってきたので、地主の許可をもらって建物を建て替えようと思っています。
その時、子供名義で登記しようと思っていますが問題はありませんか?

答え
建物の建築主、つまり建築費用を出すのはだれでしょうか?子供が費用を出すのであれば建物の登記は子供名義でおこなわなければならず、お父さんが建築費用をだすのであれば、お父さんの名前で建物の登記をしなければなりません。
そして、借地権者はお父さんであり、登記名義をお父さんとした場合、借地上の建物にお父さんの登記名義を有していますので、誰に対しても借地権を主張することができます。
しかし、子供名義で登記をした場合、借地権者と借地上の建物の登記名義人が違う事になりますので、建物登記により借地権を主張することはできません。
これには、判例がありまして、「借地権者が借地上に家族名義で所有権保存登記を経由した建物を所有していても、その借地権に建物保護法1条による対抗力を認めることはできない。
」(最判昭50.2.13)としています。
従って、建物をお父さん名義で登記するか、借地権者を地主の承諾を得て子供に変更して、建物の名義を子供名義で行うのが良いかと思われます。
つまり、借地権者と借地上の建物の登記名義人は同一にしておかないと、借地権を誰に対しても主張できなくなる恐れがありますので注意して下さい。

借地借家法(借地権の対抗力等)
第10条 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。

2 前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。
ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。

3 民法第566条第1項 及び第3項 の規定は、前二項の規定により第三者に対抗することができる借地権の目的である土地が売買の目的物である場合に準用する。

4 民法第533条 の規定は、前項の場合に準用する。

地主が土地を売却して、契約更新しないという場合

質問
地主が土地を不動産業者に売却して、業者が契約更新をしないと言っていますが、明け渡さないといけないでしょうか?

答え
あなたとこの土地を買った不動産業者とは対抗関係にたちます。
つまり、あなたの借地権が誰に対しても主張できるか(対抗できるか)どうかという問題になります。
借地上にあなた名義の建物を有している場合、借地権に対抗力がありますので、不動産業者の契約更新しない旨の主張は不当であり、土地を明け渡す必要はありません。
しかし、対抗関係にたった場合、例えば、あなたが借地契約をする以前に借地に抵当権が設定されており、その抵当権が実行されて競売されてしまった場合は、あなたの借地権は抵当権に遅れている、つまり借地権は抵当権に対抗できない事になり、その競落人からの明け渡し請求であれば、明け渡さなければならない結果となります。
従って、任意競売の場合には、抵当権設定登記より前に借地上の建物に登記名義を有する必要があり、強制競売の場合には、競売開始決定による差押登記前に借地上の建物に登記名義を有する必要があります。
対抗関係にたつ場合には、早くに対抗力を取得する、つまり借地上に登記名義を早く取得して対抗力を取得する必要がります。

地代の増減について

質問
地代の値上げを言われたのですが、そのまま認めなければならないのでしょうか?

答え
納得できる金額でない場合は交渉するべきでしょう。
但し、交渉中も相当と思われる賃料の支払いは継続して下さい。
相当と思われる賃料の支払いを拒否された場合は供託することができますので、支払いまたは供託を続けて下さい。
賃料の値上げに了承しない事を理由に借地契約を解除されることはありません。
賃料の値上げを請求された場合は、借地人が相当と思われる賃料の支払いを続けて下さい。
逆に賃料の値下げを請求する場合は、地主が相当と思う金額の支払いを続けて下さい。
最終的には裁判で賃料の増減を請求され、適正な賃料額が決まった場合はその金額の支払いを行う事になります。
そして、相当と思われる賃料と裁判で決まった賃料と差がある場合はその差額に1割の利息を付して支払わなければなりません。
相当と思われる賃料額はなかなか判断するのは難しいですが近隣の賃料額や公租公課、従前からの賃料値上げの状況等から判断しなければならないでしょう。

借地借家法(地代等増減請求権)
第11条 地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。
)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。
ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

2 地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。
ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

3 地代等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を請求することができる。
ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代等の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

借地人が死亡した場合

質問
借地人である父が死亡してしまいました。
私は別のところに住んでいますが父親が住んでいた借地上の家に住まないといけませんか?

答え
お父さんが死亡したことにより、相続人に相続されます。
つまり、借地上の建物も相続人に相続され、借地権も相続されます。
そして、あなたがその建物に住まなくても、誰かに貸してもいいし、売却してしまってもかまいません。
しかし、相続するということは、相続人全員に相続権がありますので、そのあたりは注意して下さい。
また、借地の賃料の支払い義務も相続人全員に相続されますので、相続人ひとりひとりの相続分のみの賃料支払いでは足りず、賃料全額を支払わなければなりません。

地主が死亡した場合

質問
地主が死亡したと聞きました。
どうしたらよいでしょうか?

答え
地代の支払いが問題なく続けられるのであれば、特に考えることはなく、そのまま借地契約を続けることができるでしょう。
地主が死亡することによって、地主のプラスの財産及びマイナイスの財産は一切相続人に相続されます。
従って、借地人に土地を貸す義務も相続され、借地料をもらう権利も相続されます。
従って、賃料の支払いが問題なく継続できるのであれば、つまり相続人が賃料を受け取ってくれるのであれば何も問題はないかと思われます。
少し難しいですが、法律的には、貸主の死亡によって土地は相続人に相続されますが、死亡後生じた賃料債権は相続財産ではなく、相続人に対する債務ということになります。
そして、遺産分割協議が調って、土地の相続人が一人に決まっても、貸主の死亡後に生じた賃料はなんら影響を受けずに相続人全員にその相続分に応じて取得されることになります。
従って、複数の相続人全員が賃料全額を自分に支払えと言ってきたり、自分の相続分の賃料を自分に支払えと言ってきたり、遺産分割協議がまとまっていないから受け取れないと言ってきている場合には、やはり賃料を供託するべきでしょう。

借地上の建物を誰かに貸したいけれど問題はないですか

質問
借地上に建物を所有していますが、今は誰も住んでなく使用していません。
誰かに建物を貸したいのですが地主の承諾は必要ですか?

答え
地主の承諾がなくても自由に借地上の建物を貸すことができます。
借地上の建物を誰かに売却する場合には、借地権の譲渡を伴いますので地主の承諾が必要です。
しかし、借地上の建物を誰かに貸す場合は借地権の転貸にはならないというのが判例の立場です。
判例は、土地の賃貸人は借地人がその借地上の建物に自ら居住するばかりでなく、反対の特約が無い限り、他に賃貸してもその建物賃借人に敷地を使用させることをも当然に予想しかつ認容しているものとしています。
実際、借地上の建物の賃貸の場合、当該建物の設置という土地の使用状況に変更はなく、地主に何も不利益となるものではありません。
借地上に駐車施設を設けて駐車場として賃貸する行為は借地の転貸に当たらないという判例もあります。
借地権の譲渡と転貸は分けて考えなければならないものと思われます。

地主が借地契約の更新をしないから、土地を明け渡せといわれた。

質問
地主から、次回の契約更新はしないから、建物を壊して土地を明け渡してほしいと言われました。
出て行かなければならないでしょうか?

答え
建物の使用を継続しているのならば、基本的には出て行かなくてもよいと思われます。
借地契約では、契約期間が満了しても借地上の建物の使用を継続している場合には、借地契約は更新されます。
しかし、地主のほうから更新について異議を述べることができるのですが、この異議を述べるには正当事由が必要になります。
この借地契約を終了させる正当事由とは、地主が土地の使用を必要とする事情やそれまでの賃貸借関係の経過、現在の土地の利用状況、そして、明け渡しの条件として地主から借地人に対する財産上の給付、いわゆる立ち退き料の支払いの有無等を総合的に判断するものとされています。
契約解除に関し、賃料不払いや用法遵守義務違反等があった場合はこの正当事由とは別個の契約解除の原因となります。
従って、契約期間が満了しても建物を使用継続しており、賃料不払い等の賃借人の義務違反が無い場合は契約更新されて借地の使用を続けることができるでしょう。

(借地契約の更新請求等)
第5条 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。
ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。

2 借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、前項と同様とする。

3 転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする土地の使用の継続を借地権者がする土地の使用の継続とみなして、借地権者と借地権設定者との間について前項の規定を適用する。

(借地契約の更新拒絶の要件)
第6条 前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。
以下この条において同じ。
)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。

貸している土地を図自分で使う必要が生じた場合

質問
他人に土地を貸していますが、今度息子夫婦がこの土地上に建物を建てて住むことになったので土地を返してもらいたいのですが、問題はありますか?

答え
一般的には、借地人に地代の滞納や土地使用の契約違反等の事情がなければなかなか難しいものと思われます。
借地契約において、契約を終了する、契約更新を拒絶する場合、地主側に契約終了についての正当事由が必要です。
この正当事由の諸ファクターは、①賃貸人、賃借人双方の土地使用を必要とする事情②借地に関する従前の経過③土地の利用状況④財産上の給付の申し出等から判断します。
つまり、①賃貸人と賃借人の土地利用の必要性の度合いを比較考量する。
②その土地を借りるに至った事情、権利金等の支払いの有無、契約更新は何回あったのか、更新料の支払いの有無等。
③土地の存する地域の状況、有効利用の必要性及び相当性④いわゆる立ち退き料の支払いの有無、金額、代替土地の提供等から判断することになります。
今回のケースでは息子さん夫婦がこの土地に建物を建てて居住するためということですが、それが、例えば近く人住む高齢の両親の世話をする為で、近く人住む場所が見当たらないだとか、契約上息子夫婦が建物を建てる場合は契約を終了するとしていて、代替土地を提供しているとか、立ち退き料の支払いを行うといった場合には正当事由が認められやすいと思われます。
この正当事由の判断は、個別事案により検討しなければならないでしょう。

借地上の建物が全焼してしまったのですが、借地契約は終了しますか

質問
借地契約では、「建物が滅失した場合は借地契約は終了する」となっています。
隣家の火事にまきこまれて、建物が全焼してしい、地主から借地契約は終了ですと言われました。
当然に借地契約は終了しますか?

答え
当然には借地契約は終了しません。
建物が無くなって借地契約が終了するのは、建物が朽廃した場合です。
建物の朽廃とは、建物に生じた自然的腐食状態によって、建物として社会経済的効用を失った場合をいうのであって、地震、火災、風水害のような事変や、改築のための取り壊しのような人為的な原因によるものとは区別されます。
次に、契約の更新前に朽廃以外の建物滅失があった場合には、借地借家法第⑦条に規定があり、契約更新後の場合には借地借家法第8条に規定があります。
法律上は、契約更新前に建物があった場合には借地人から借地契約の解除を申し入れることはできず、借地契約の期間内に存する建物を建てる場合には自由にでき、借地契約期間を超えて存続する建物を建てる場合には地主の許可が必要になります。
そして、このような規定に反し、借地権者に不利な契約条項は無効となるため、火災で建物が滅失した場合では当然には借地契約は終了しません。
(借地借家法第9条)

(建物の再築による借地権の期間の延長)
第7条 借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失(借地権者又は転借地権者による取壊しを含む。
以下同じ。
)があった場合において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造するにつき借地権設定者の承諾がある場合に限り、借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続する。
ただし、残存期間がこれより長いとき、又は当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間による。

2 借地権者が借地権設定者に対し残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造する旨を通知した場合において、借地権設定者がその通知を受けた後2月以内に異議を述べなかったときは、その建物を築造するにつき前項の借地権設定者の承諾があったものとみなす。
ただし、契約の更新の後(同項の規定により借地権の存続期間が延長された場合にあっては、借地権の当初の存続期間が満了すべき日の後。
次条及び第18条において同じ。
)に通知があった場合においては、この限りでない。

3 転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする建物の築造を借地権者がする建物の築造とみなして、借地権者と借地権設定者との間について第一項の規定を適用する。

(借地契約の更新後の建物の滅失による解約等)
第8条 契約の更新の後に建物の滅失があった場合においては、借地権者は、地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。

2 前項に規定する場合において、借地権者が借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権設定者は、地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。

3 前2項の場合においては、借地権は、地上権の放棄若しくは消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れがあった日から3月を経過することによって消滅する。

4 第1項に規定する地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをする権利は、第2項に規定する地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをする権利を制限する場合に限り、制限することができる。

5 転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする建物の築造を借地権者がする建物の築造とみなして、借地権者と借地権設定者との間について第2項の規定を適用する。

(強行規定)
第9条 この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。

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