こんな判例がでております。 建物明渡等請求事件

上告人が被上告人に対し、土地を賃貸していたところ、上告人からの  解除により同契約は終了した。被上告人は、上告人に対し、運送委託料債権を有していた。本件は、上告人が、被上告人に対し、本件土地について  所有権に基づく明け渡しを求めたところ、被上告人が同運送委託料債権を被担保債権とする商事留置権(商法521条)が成立するとして、争った事案である。

最高裁は、民法が、「物」を有体物である不動産及び動産と定め(85条、86条1項、2項)、留置権の目的物を「物」と定め(295条1項)、不動産を目的物から除外していないこと、商法521条は、留置権の目的物を「物又は有価証券」と定め、不動産を目的物から除外していないこと、他に同条が定める「物」を民法と別異に解すべき根拠がないこと、不動産を対象とする商人間の取引が広く行われている実情は商法521条の趣旨にかなうことなどを挙げ、不動産は留置権の目的物となると判断した。

不動産が商事留置権の目的物になるかどうかについては、昔から少々議論がありました。留置権の対象は取引の迅速性が認められる物であるとして、不動産は対象外だという見解があり、同旨の判断をしている下級審判例もあります。本最高裁判例は、従前の論争に決着をつけたものであります。

○平成29年12月14日 最高裁第一小法廷判決 平成29(受)675号

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87304

 

商法(商人間の留置権)

第521条  商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、この限りでない。

民法(定義)

第85条 この法律において「物」とは、有体物をいう。

(動産及び動産)

第86条 土地及びその定着物は、不動産とする。

2 不動産以外の物は、すべて動産とする。

3 無記名債権は、動産とみなす。

(留置権の内容)

第295条 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。