前回和解が成立した建物明渡等請求訴訟について,保証人に保証債務を請求したのですが,その保証債務について少し争われました。

民 法 
(保証債務の範囲)
第四四七条 保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。
 保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。
保証人には,主たる債務者に請求できるものは,全て請求できるようにも思えます。
しかし,契約の解除によって主たる債務者が負担することになる「原状回復義務」,「損害賠償義務」を保証債務に含めるには少々問題があるようです。
損害賠償義務についてはおおむね大丈夫みたいですが,原状回復義務については見解が分かれているようです。
かつての判例では,「契約の解除が過去に遡って効力を有する」場合と「そうでない場合」に分けて論じられていたみたいで,過去に遡って効力を有しない場合には,保証人は原状回復義務の責任を負い,過去に遡って効力を有する場合には,責任を負わないとされていました。
賃貸借契約の解除(遡及効がない) ⇒ 目的物返還債務,損害賠償債務 ⇒ 保証債務の範囲に含まれるとしている。
売買契約の解除(遡及効がある) ⇒ 代金返還債務 ⇒ 売買契約の履行に関する債務と契約解除に代金を返還する債務とはその発生原因を異にし,全く別個の債務として,当然に保証したものとは言えないとしている。
その後最高裁は「売買契約の解除に伴う原状回復義務」,「請負契約の合意解除の場合の前払金返還債務」も保証債務に含まれる旨判示しています。
ということもふまえて,今回は建物明渡の強制執行に関する費用も保証人の方に負担していただきました。