当事務所ではあまりでてこない不動産の登記申請ですが,所有権保存登記の抹消の登記申請をしましたので,投稿しておきます。

所有権保存登記とは,はじめてなされる所有権の登記の事です。はじめて登記された所有権(保存)の登記を基礎として,その不動産に関する権利の登記がされていきます。通常土地については,誰かの権利の登記がされていますので,多いのは新築建物の所有権保存登記の申請です。

不動産登記法(所有権の保存の登記)

第74条 所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない。

 一 表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人

 二 所有権を有することが確定判決によって確認された者

 三 収用(土地収用法(昭和26年法律第219号)その他の法律の規定による収用をいう。第118条第1項及び第3項から第5項までにおいて同じ。)によって所有権を取得した者

2 区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。

今回はこの抹消の登記申請についてです。

(所有権の登記の抹消)

第77条 所有権の登記の抹消は、所有権の移転の登記がない場合に限り、所有権の登記名義人が単独で申請することができる。

通常,新築建物の所有権保存登記の申請人は,不動産登記法74条第1項第1号により,”表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人”となります。新築建物の権利の登記(所有権保存登記)を申請する前提で,建物の表題登記をしなければなりません。建物の表題登記とは,建物の物理的現況を公示するもので,建物の種類,構造,床面積等が登記事項になっております。この表題部の登記に,所有者が記載されます。しかし,この表題部に記載される所有者は,権利の登記欄に登記される所有者とは違いますので,対抗力がなく,所有権保存登記がされると抹消されます。

不動産登記規則 第158条

登記官は、表題登記がある不動産(所有権の登記がある不動産を除く。)について所有権の登記をしたときは、表題部所有者に関する登記事項を抹消する記号を記録しなければならない。

ここで問題が生じます。新築建物の場合,最初に表題部登記がされて,表題部の所有者欄に所有者が記載されます。つまり,一応この新築建物はその所有者が建てた建物,所有者ですと公示されます。ところが,例えばAさんが表題部所有者欄に登記されていますが,実はBさんが所有者で,Bさん名義で所有権保存登記を申請できるかというとできません。表題部所有者をAさんからBさんへ更正もしくは変更ができたとしても,新築建物の表題部に違う人の名前が一度登記されており,Bさんにとっては,なんだか中古建物みたいでいやなものです。

そこで,どうするかというと,一度Aさん名義で所有権保存登記を行います。そしてその所有権保存登記を抹消すると,所有権保存登記を行った時点で表題部所有者の登記が抹消されていますので,表題部所有者の登記がされていない,しかも,所有権の登記もされていないということで,登記記録が閉鎖されてしまいます。そして,改めてBさん名義で建物表題登記を行っていくことになります。

ただし,このような場合でも,登記記録を閉鎖しないで,表題登記をいかしていく場合もあります。

①表題部所有者が被相続人で相続人から保存登記した場合と②区分所有で転得者から保存登記をした場合で,所有権保存登記を抹消した場合には,表題部を閉鎖せず表題部所有者を回復することができます。

色々なパターンがありますので,注意が必要です。